マンションの玄関、大理石タイルの研磨。
「白っぽい大理石に赤茶色のシミができている。全体にくすんで光沢が無い。この状態を何とか出来ますか?」とのご相談です。
色のついた液体をこぼして放っておいたわけではない。何かをずっと置いていたということもない。
なのに、ふと気づくと出来ていて、数年の間にジワッと広がってきている。
なぜ???
白系の大理石(今回の画像はドラマチックホワイトという種類です)は、イメージと違うんと思うんですが、鉄分を多く含んでいます。
鉄って、空気がある中で水分や湿気にしばらく触れていると赤茶色にサビが出てきますね。
お風呂場に置き忘れたスチール製のヘアピンが、数日ほっといたら周りが赤茶色に滲んでいて、わっヘアピンの形に跡がついちゃった...って風景、ご覧になったことありませんか。あのような感じです。
大理石に混ざり込んだ鉄分が、何かの拍子で水分に触れ、パッと赤く錆びた、そこが引き金になって連鎖的に周囲に錆が拡がった、という現象です。
大理石は、いっけんツルリと固く見えますが、実は顕微鏡で見るとフガフガのスポンジのように無数の孔が空いています。そのため、スポンジのように空気も含むし、水分や色素を吸い取っちゃうような感じで伝染しやすいです。
大理石は、天然の化石なので工業製品のように均一な組成ではありません。鉄分が濃いところ薄いところ、どこにどんなふうに混ざっているかは誰にも分かりません。
そのようなことで、赤くなった鉄(錆)がどこにあるかは分かりません。タイルの裏側?断面?ともかく表面からいくら見ても、判断できません。
したがいまして、このシミを研磨で取り除くことは不可能です。
もしかしてほじくり出してシミの原因を突き止めたとして、間を置かず再発する可能性が高いです。
・このシミは天然の大理石にしか生じない特性です。
・シミをなくしたいことが一番の目的である場合は、研磨によるメンテナンスはミスマッチです。
・もし高額な費用を投じてタイルを張り替えられたとしても、同じ位置にある以上、再び同様のシミができる可能性は高いです。
・しかしメンテナンスされると、全体としての質感は回復できます。
と、ご案内、「シミはナシにできないのですね...でも、全体的に生活感たっぷりの汚れがイヤなんです。メンテナンス、トライしたいです!」のご了承をいただき、いざ大理石の研磨レストレーション。
ハイ!光沢なめらか!大理石本来の質感に回復できました。
ハンドポリッシャーの形状がクッキリ鮮明に映り込んでいます。
指で触ると、象牙や角の調度品に似た、どこか温かみがあるツルツル感です。表面に汚れが無い、もちろんマニキュアやワックスを塗った感じも無い、ニュートラルな状態です。とても清潔!
そして、ドラマチックホワイトさんのお顔にできたシミは、このようになりました。
よーく見ると、薄くあります。
薄くなったのは、「たまたま」錆びて色づいた部分が表面に近くて、研磨でちょっと取れたってことかと思います。
家庭用電源を使用する現場施工の石材研磨では、官製はがき1/3程度の厚みしか削り取ることはできません。
それ以下までやっちゃうと目地との兼ね合いや平らさがおかしくなっちゃう。あくまで歩行傷や表面に付着した汚れを除去することが目的で、必要十分という考えです。
・白っぽい大理石は、黄色~オレンジ~赤~赤茶色といったシミが発生しやすい。
・赤茶色の染みは水分(湿気)が多い箇所で生じる。
・住宅において北の方角は、湿気を帯びやすい。
・日本の住宅は、だいたい北に玄関がある。
・日本のマンションで大理石が使われるのは、主に玄関である。
・白っぽい大理石タイルの玄関には、赤茶色のシミが「何もしないのに」できることがある。
このブログをお読みになった方は、いわゆる設計・建築・住宅・デザインの専門家よりも深い知識を得たということになります。
玄関の大理石にシミできる問題に言及する住まいの先生は2021年現在おりません。さまざまな石のコンディションを拝見してきたウォッシュテックならでは、ここだけの情報かと思います。
玄関が大理石のマンションは無数にありますが、理由や対処法は探せども見当たりません。お困りの方は、どうされているのでしょう。スッキリしないことですね。
もし、「この玄関、シミがね...でも、私、変なことしてないのよ!」と、お友達に言われたら、ドヤ顔で「シミができた理由」を語ってあげて頂きたいです。
ついでに「磨いたらツルツルに戻るよ」とも教えてあげてください。