中古マンション購入後、数年。入居当初から玄関タイルは汚れてくすんでいたけれど、いよいよ研磨したい。とのことで、石材研磨をご依頼くださいました。
石種は、エンペラードールダーク。大理石です。
売却以前のお手入れ・メンテナンス方法は不明。現状、ポップアップと痩せがきわめて多く、とても厳しい状況。
※ポップアップ:石の一部分だけが他と離れ、プカッと飛び出るように浮かんだ、もしくは脱落した状態。
※痩せ:一部分だけが減る、もしくは変質して平滑を失った状態。
石を正しく研磨し、可能な限り健やかな状態に整え、石材本来の質感を取り戻すことは、とても難しいです。そんなことを言って、この料金でやっているのは、ウォッシュテックくらいだろうなぁと思います。
もちろん、研磨用のディスクやポリッシャーなどの「オペレーション」も容易なことではありません。しかし、オペレーションよりも更に難しいのは、トライ&エラーから、いかにベストな解決に導けるかという「マネジメント」だと思います。
オペレーションとマネジメントが両方できなければ、本物の石材研磨というミッションは完遂できないのです。
ワックスを塗る。ガラス質のシリコンコーティングで隠蔽する。着色剤が含まれたオイルを浸透させる。薬品を含む研磨材でポリッシュし石材を変質させて光沢感を演出する。そのような数か月から数年後に「もっと大変な状況になる」と分かりつつ、「今が良ければ。安いし。早いし」というテクニックが無数にあり、その謎(たいてい誰も教えてはくれません)を解いていかねばならないのです。解くだけではだめ。かならず良い結果にしなければならない。
あれ?光って来ない。ならば、こう?光って来ない。うーん、じゃあ、こうする?あれ?だったらこう?みたいなことを磨きながら石と相談。探り探り。ねちっこく、でもスピーディに。これが、現場施工の石材研磨のマネジメント。
※私どものマネジメントは、ハウスクリーニングを基としているので、目地を切って取り出し、工場の高圧電流で研磨する石屋さんとは全く方向性が異なるノウハウかと思います。
「石をちゃんと磨けたら、すごく面白いよ!」と社長・中島は色んな人に言う。しかし、笛吹けど踊らず。いろいろ大変なんでしょぉぉ、自分にはできません。とすげなくされ、社長ションボリ。リスクを知って高いレベルで対応するよりも、リスク回避のため着手しない方が安心、そう判断する同業者が大多数なのです。経営戦略的には正解だと思います。
しかし、現実問題、住宅の大理石の汚れやくすみにお困りの方がとても多いわけで、そのお悩みを解消する技術がこの世にある。なら、ちゃんとそのテクノロジーを個人の居室まで的確に届けられる人がいた方がいい。横浜にたった一人。だとしても、やっていこ。私はそう考えてます。
かくして、今日もお納めできたよ、エンペラードールダーク!
いつも七転八倒。でも、抜本的に美しくするなら、このやり方しかない。だから嘘のない美しさだ。と、ワタシは思います。お客様もご満足くださったです。