都会の空気の中で住まう

新築、リフォーム、リノベーションに際して、クロス、床、ドアや収納などの建具、など内装の選択についてのご相談を頂くことがあります。

そのとき、私の差し上げるお返事は、

珪藻土、漆喰、無垢無塗装木材よりも、ビニールクロス。

素焼き(表面に光沢が無い)テラコッタタイル、無垢無塗装フローリング、表面加工がないコルクよりも、クッションフロア、フロアタイル。

無塗装の無垢フローリング、無塗装コルクタイルもしくはコルクフローリングよりも、表面の木材が厚めに設定された塗装フローリング。

色は、濃い焦げ茶や白木色ではなくキツネ色か茶色。

そのように、とってもつまらないです。「森ガール的」ではないというか、エコ&ナチュラルでなく石油・大量生産くさいというか。

私自身、けっしてケミカルな住まいが好みではないのですが、ハウスクリーニングをする立場からその理由を一言で申し上げるとすれば、「首都圏の住まいだったら、その方が確実にラクで長期的に見て安くつくから」です。


こちらの写真をご覧ください。東京都世田谷区。近隣には緑地公園があり、周辺は外構部に植裁が必ずあるような緑豊かな住宅地です。都内の中では、ひじょうに環境が良い立地といえます。

心地よい風が抜けるので、日和が良い日中は窓の一部を開けられますが、共働きのため通常はお留守、締め切られています。数ヶ月に一度程度ご自分でがんばって窓を拭かれているそう。

さて、この一見キレイに透けてるガラスを、このマイクロファイバーの布で軽く水拭き。

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えっさ、

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えっさ、

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ぎょぎょっ、もうこんなに黒くなっちゃった。

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↑ただいま社長は乾いたサラシで仕上げ拭きをしています。

※実はガラスをスクイジー(ゴムが付いた車のワイパーのようなガラスクリーニング用の道具)で洗ったところ、もっとドギツく黒い水が垂れて衝撃映像だったのですが、社長の動きが早すぎて写真ブレブレになってしまいまいた、すいません。※

4平米程度のガラスを拭き終わり、回収した汚水。バケツ水には黒い粉塵が沈殿しています。表面には薄く油膜が浮いて見えます。 

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意外かもしれませんが、このバケツ水は窓の内側(室内側)に付着していた汚れです。お客様は「窓の汚れと言えば、外でしょう」と窓ガラスの外側を重点的にお掃除されていたので、あんまり汚れてませんでした。白っぽい雨粒の跡が主体で、汚水は軽く濁る程度。

同時にフローリングのクリーニング(洗浄)とワックスの塗布もさせていただきました。窓と同様、床からも黒く細かな油っぽい汚水が回収されました。


首都圏、特に弊社お客様が集中する東京都内、横浜市、川崎市は、多少違いはあれども、室内を拭き掃除したりエアコンクリーニングをすると、これに近い汚れが回収できます。たとえ「各世帯お庭に植栽があって比較的密集していない住宅地」「幹線道路、高速道路から割と離れてる」「近隣に大きな公園、緑地がある」「24時間換気システムありの住居」であっても、こういった黒くベタベタした汚れの侵入を完全に防ぐことはできないように思います。

デベロッパー、不動産業者、建築業者、メーカー、各方面みなさま「そんなはずはないです、それほどじゃないです」と仰るでしょうけども、掃除屋は、ガラスを何度拭いてもネバネバした曇りが切れない〜濯いでも濯いでも黒く汚れる〜もぉ〜都会は大変だよ〜って、体で知ってるんであります。

都市部では、そんなふうな厳しい環境なので、「汚れた空気や有害な化学物質を吸着して室内をクリーンに保つ」機能が、著しく短くなりがち。サラサラとマットな質感が黒ずんでベタベタに短期間で変化しがち。飽和というか消耗がとても早いです。

一方、空気が澄んでいる地方に行くと、無垢無塗装の木材や漆喰が長期間美しく保たれているのを目の当たりにします。だからといってべつだん、特殊で頻繁なメンテナンスをしているわけではなく、短い周期でリフォームを入れているわけでもない。

※ですから、もし空気がきれいな環境にお住まいならば、ナチュラルで伝統的な建材や内装をお勧めしています。その方が気持ちよいし、何より私が好きだから(←おい!)※

首都圏の人口密度を考えてみれば、店舗や住居の換気扇から排出される油分も熱気も、吐く息もホコリも、車から出る排気ガスも、けた違い。その巨大なマンパワーを考えれば、その中に適した住居の形も違ってくるのも仕方ないと思えてきます。

しかし、その中で住居を得られる多くの方が、新築時やリフォーム時に多少高くついても、その素敵な感じの内装を都心の我が家に取り込みたい…と考えられるようです。正直なところ、「その土地でしか味わえない魚や野菜は、そこに行かなきゃ食べられない」のようなもので、なかなか難しいんじゃないかな、と思います。

水洗い不可、汚れが浸透するため洗浄による復帰ができない内装を、日常のお掃除で維持管理することは、とても難しい。※ただし、明治時代レベルの掃除の所作を難なくできる方なら可能かもしれません。私だったら…時間的にも体力的にもすぐにギブアップ!

定期的にハウスクリーニングをして長く清潔に使い続けるという方法を採れないということは、塗り換え・張り替えなど周期的なリフォームで美しさや清潔を取り戻していくわけですが、コストが高くなる傾向があり、業者の手配も面倒なもの。店舗など収益物件ならば「汚れて古くさくなったら休業時か空室時に改修工事する」のも可能ですが、住居は日常そこで寝食し、何十年もかけてローンを返済していくのが通常ですから、ちょっと事情が違います。

「そんなことない、大げさだ。信じがたい。私の夢、好きな住まいも尊重したい。それを否定するなんて気に食わない」と、お顔を曇らせる方も多くいらっしゃるかと思います。そりゃごもっとも!そんなこと強く言って相手の方を困らせるなんて、私だってイヤンイヤンです。

私は、今まで汚れに関してご相談を受け、実際にお住まいを拝見し、ハウスクリーニングをしてきた、その範疇でしかお答えすることはできません。逆に申し上げると、申告な状態、困った状態でお悩みの方のことしか知らないのです。都心部で難なく長くキレイに過ごされている方が、どのくらいたくさんいらっしゃるのか、実はワカランのです。ハウスクリーニングをする立場の偏った視野ではありますが、あんまり出てない意見なので、今回チト書いてみました。

詰まるところ、私の住まいではないのですから、その方のお好きに自由にされるのが一番です。どんな場合でも、全力でフォローさせていただく所存です!

日時:2010年5月15日 PM 09:16
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